【書籍1巻発売&コミカライズ進行中】悪女の汚名返上いたします!

 うずくまり身を守るセレーナに、ベアトリスは怒りのまま暴力を振るおうとした。

「やめろ、ベアトリス」
 
 勢いよく振り下ろされた手をユーリスがとっさに掴むと、ベアトリスがハッとした顔でこちらを見た。

 バレリー伯爵家の複雑な家庭事情は、ユーリスも耳にしたことがある。
 
 伯爵の婚外子だと名乗る娘が突然やってきたことで、おしどり夫婦で有名だった伯爵夫妻の仲は険悪に。夫人は心を病んでしまい、このたび急死してしまった。
 
(この侍女が、噂の自称婚外子の娘か。……たしかに、バレリー伯爵とベアトリスに似ている)

 ユーリスは、地面に倒れたままのセレーナを横目でちらりと見た。

「君、大丈夫か」

 返事がないため、不思議に思って顔をのぞき込むと、セレーナはポロポロと涙を流して泣いていた。

「怪我はないか」

「はい……だい、じょうぶです……あっ……でも、お花が……」

 転んだ時に落として踏んでしまったのだろう。地面には無残な姿になったマリーゴールドの花びらが散らばっていた。

 呆然としているセレーナに手を貸し立たせてやると、後ろから(かす)れた声が聞こえてきた。

 
「貴方は、セレーナの味方なのね」

 
 振り返れば、ベアトリスは両手を握りしめ、下唇を噛みしめてユーリスを睨み付けていた。