自分自身でも漠然としている、ただ気になっているという感覚を説明出来ず、結希は唸る。
 幼なじみで仲がいいとはいえ毎日あれこれと報告し合うわけでなし、昨日のこともまだ話していないのだから「御崎くんがいないのが心配で」などと言い出そうものならあらぬ疑いを生じさせるだけかもしれない。かといって、こんな誰が聞いているとも分からない場所でイチから話して聞かせることも出来ない。

「――そんなところに突っ立っていられると邪魔なんだけど」

 と、考えを巡らせていた結希だったが、再びの背後からの声に振り向き、

「あ、御崎く、ん……?」

 言葉を失った。

「おはよう、吹野さん。そろそろ教室に入った方がいいんじゃないか?」
「俺のことは無視かよ。……っていうかお前、」

 結希たちの目は御崎の頭に釘付け。二人してそっと周囲を窺って、また視線を戻す。行き交うみんなは見えていないらしい、彼の頭部にのる、――それ。

「あまりじろじろ見ないでくれないか」

 御崎は一見普段通りのクールな表情、しかし眉間にはしっかりとした皺が刻まれていた。それはつまり、素知らぬ顔をしてはいても気付いていないはずが、気にしていない訳がないということだ。

 彼の髪にしがみつくように鎮座する塊……いや、その不思議な生き物は、生意気そうな目で彼らを見ていた。