米倉は意見を尋ねているようで、これは決定事項だ。
 結希がちらと隣を見上げるが、御崎は気難しげな顔をして米倉を見ている。

「……サポートが必要だと言うのなら、誰より吹野さんを支えてみせますよ」

 そんな御崎の返答に、米倉は満足気に頷いた。

「でも御崎くん、風紀委員だよね。兼務とかって可能なんですか?」
「特執はぶっちゃけ裏組織だから大丈夫、大丈夫」

 へらへら笑う米倉は結希の問いに答えつつ、後処理の指示を出していた眼鏡の女子生徒を手招く。特別執行委員会において副委員長を務める山本珠絵だ。
 山本は体育館内の状態が落ち着いたのを見て取ると、彼女の能力である視覚聴覚を眩ませる見えない壁を解除し足早にやって来た。

「委員の兼務についてですか。今簡単に説明してもいいですけど、もう加入が決まったのなら放課後に情報共有した方がいいですね」

 今はまず授業に戻り、普通の学生としての本分を全うしましょう。そう言って手本を見せるように山本は背中を向け、米倉はメンバーに手を振り撤収の合図を送って彼女に続く。

 結希も御崎とともに、それを追いかける。――新たな仲間。不意に胸をよぎった予感は、その善し悪しを掴めないままに消えていった。