ここ、葛城高等学校の敷地内には鬼がいる。
 いわゆる悪霊または妖と呼ばれるようなもので、ほとんどの教師、生徒はその存在を知らないまま日々を過ごしている。
 特別執行委員とは、校内の見える者が集められた組織であり、人知れず対処するために、授業中であろうが休憩中であろうがこうして駆り出されているのだ。

 仕事を終えた刀は、少女の手元で仄かな光を灯すようにして消える。委員会の面々もまた、対鬼のため発動していた能力を収め、後処理に取り掛かっていく。
 仕留められた鬼は跡形もなく消える、しかし被害が出れば何事もなく元通りというわけにはいかないからだ。

 今回も鬼のうち一匹が憑いていたバスケットゴールがひしゃげて床に落ちているというのが現状。

「ごめんね、巻き込んじゃって」

 少女――吹野結希は、部外者であったはずのクラスメイトに慌てて走り寄る。
 自分の手の中から消えていった弓を不思議そうに眺めた御崎廉は、眉尻を下げ苦く笑う結希に静かに首を振る。

 朝から感じていた不快感のために保健室で休んでいた彼は、教室に戻ろうとしたところたまたま特別執行委員たちが体育館へと駆け込んでいく姿を見かけ、その後を追って巻き込まれることとなった。
 ……無関係な一般の生徒たちが巻き添えにならないよう張り巡らされた、見えない壁をすり抜けて。