妖帝と結ぶは最愛の契り

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 その夜、子細(しさい)を知った弧月に美鶴は叱られてしまった。

「本当に分かっているのか? そなたに何かあれば、灯と香は野犬に噛みつかれずとも罰を与えられるのだぞ?」

 声を荒げず、諭すような苦言からは危ない真似をしないで欲しいという心配が滲み出ている。

「申し訳ございません」

 双子を助けたことは後悔していないが、周囲を心配させてしまう行動を取ったのは事実だ。
 そこは反省しなければと思い素直に謝罪した。

「まったく……本当に、怪我がなくて良かった」

 最後に深く息を吐いた弧月は、美鶴の肩を引きよせぎゅうっと抱き締める。
 その抱擁の温かさと強さに、心から愛し案じてくれているのだと知った。

「本当に、申し訳ありませんでした……」

 弧月から伝わってくる愛情は泣きたくなるほどに嬉しく。
 だからこそ心配をかけてしまったことが心苦しい。

 だが、おそらく似たようなことがあれば自分はまた心配をかける行動を取ってしまうだろう。
 もちろん、腹の子が最優先ではあるが。

「弧月様、約束します。今後似たようなことがあっても一人では行動しないと。お腹の子のことを最優先に考えると」

 だから、これ以上の心配はなさらないでと伝えた。
 だが、そんな美鶴の言葉を聞いた弧月は少しの沈黙の後「やはり分かっていない」と不機嫌に呟く。