妖帝と結ぶは最愛の契り

「……あり得ません!!」
「え?」
「で、でも」

 本人から否定の言葉を聞いてもすぐには信じられないのか、二人は顔を見合わせながら戸惑う。

「主上は確かに私にとっても大切な御方です。ですがそれは殿方としてというよりは弟を見守るような心持ちに近いのです」
「で、では、あの優しい眼差しは……」
「恋情ではなく、親愛の様なもの……?」

 戸惑いながらも理解した様子の二人に、小夜は深くため息を吐き告げる。

「大体、私の好みはもう少しお年を召した渋みのある殿方なのです」
「え? お年を召した?」
「し、渋み?」
「ええ、若々しい方よりも、もう少し貫禄が出てきた方に魅力を感じるのです。そんな殿方がたまに見せる不器用なところを見ると、こう胸がときめいて……」

 そのまま何故か渋い殿方について滔々(とうとう)と語る小夜に、灯と香だけでなく美鶴もぽかんとしていた。

 いつも凛とした雰囲気の、これぞ理想の女官といった風情の小夜。
 そんな彼女しか知らなかった美鶴は、まるで少女のように頬を染め自分の好みを語る小夜を可愛いと思った。

「……ふふっ」

 つい笑い声を上げ、ほっと安堵する。