妖帝と結ぶは最愛の契り

「小夜姉さま、あまり叱らないでくださいまし」
「美鶴様が来てくれたおかげで私たちは助かったのです」

 ちゃんと仕えてくれてはいても、あまり良くは思われていなかった二人に庇われ素直に嬉しい。
 だが、自分は彼女たちに野犬が咬みつくのを防いだだけで、最後は結局二人の力で野犬を止めた。
 自分のやったことはそれほど大層なものではない。

「あの、でも最後は二人が私を助けてくれたのだし……」

 逆に申し訳なくなって告げると、二人は揃って「いいえ!」と声を上げてこちらに向き直った。

「美鶴様の予知が外れることがないのは仕えてからも幾度か見ました」
「こうして私たちが無事でいられるのは美鶴様が来てくれたからに違いありません!」

 断言する双子に気圧されつつ、そういえば何故弧月がいないのに助けられたのだろうと疑問が浮かんだ。
 弧月の命を受けた者が動いた場合でも予知は変えられるが、今回は彼に伝えることしか出来なかったというのに。

(どうしてかしら?)

 不思議だが、それをちゃんと考える前に双子が真面目な顔で膝を折る。

「今まで申し訳ありませんでした、美鶴様」
「これからはご恩に報いるためにも心からお仕えしたいと思います」
「え? えっと」

 たしかに今まであまり良く思われていない様子だったため少し悲しいとは思っていた。
 だが、二人とも仕事はしっかりこなしてくれているし、良く思っていないからと嫌がらせや暴言を吐くようなことはしていない。
 今までとて、謝られるほどのことはしていないのだ。