妖帝と結ぶは最愛の契り

 予知は七日以内に起こる。
 だから今すぐ起こることではないかもしれないが、二人の姿が見えないことで不安が増した。

「灯と香ですか? 私が戻って来たからと洗い物を雑仕女(ぞうしめ)に言いつけてくると殿を出ましたが?」
「……小夜、二人を見ていてくれないかしら? あと、出来れば弧月様にお知らせしていただきたいの」

 予知は弧月を通さなければ変えることは出来ない。
 とはいえ弧月本人でなくても良い。弧月の命を受けた者が助けになってくれれば予知は変えられると今では分かっている。
 忙しい弧月の手を僅かでも煩わせるのは気が引けるが、だからと言って二人が怪我をすると分かっているのに見過ごすことは出来ない。

 小夜に今視た予知を告げ、とりあえず伝えてもらうように頼んだ。
 美鶴を一人にするわけにはいかないと渋る小夜だったが、小夜の力を使えば伝達だけはすぐに出来る。双子も遠くにまでは行っていないだろうからすぐ見つかるだろうと説得し探しに行ってもらう。

「では主上にお知らせし、灯と香を探してきますので美鶴様は大人しく部屋にいてくださいまし」
「ええ」

 不安気な小夜に大丈夫だと頷いた。
 自分一人で行動しても良い結果になるわけではない。大人しく待っているのが一番だ。

 だが、小夜を見送り手習いを再開した少し後。
 一行だけだった文字が三行になる程度しか経っていない頃に、犬の鳴き声が耳に届いた。
 その鳴き声が先程聞いたばかりのものと重なり、胸に靄のような不安が現れる。