「そうか。……だがやはり心配だ、何故男は立ち会ってはならぬのか!」

 ぐっと眉間にしわを寄せ嘆く弧月を愛おしく思う。
 穢れには触れたくないと思う殿方の方が多く、立ち会いたいなどと言ってくれる方は稀だ。
 こうして思い嘆いてくれるだけでもとても嬉しかった。

「陽の気を持つ殿方が穢れに触れるわけにはいかないからですよ。……それがなくともそうやってうろたえているだけならばいても意味がないからです!」

 気力を取り戻ししっかりと立ち上がった小夜。まなじりを吊り上げて、慌てる弧月の言葉をばっさりと切る。
 普段の丁寧な物言いが崩れているのは、小夜も多少は慌てているからだろうか。

「主上は女医を呼んだら族の捕縛を取り仕切って下さいまし。このままでは美鶴様が無事にご出産なされても安心して戻っては来られませぬ」
「わ、分かった」

 弧月から美鶴を奪うように引き離し、小夜ははっきりと弧月がするべきことを告げた。
 臣下であるはずの小夜にたじたじになっている弧月を見て、もしかしたら本当に最強なのは小夜なのかもしれないと美鶴は思う。

「灯! 香! しっかりおし! 美鶴様のご出産ですよ、準備を手伝いなさい!」
「ふぁ、ふぁいっ!」
「りょ、了解ですぅー!」

 小夜の叱責に双子も少々ふらつきながら立ち上がる。
 そんな三人に手伝われて白装束を身に纏った美鶴は、小屋に移動し出産に臨んだ。

 そして数刻後。
 陽も落ち人々が寝静まる頃に、都の端で元気な産声が上がる。

 美鶴は無事、男の御子を出産した。