「……オレール様は、いつ領土にお戻りになるのですか?」
「そうだな。騎士団の除隊手続きが済んだら……明後日くらいでしょうか」
「では、私も一緒に連れて行ってください」

 オレールは戸惑った様子で、首を振った。

「しかし、婚約の話もまだちゃんと屋敷の者には伝えられておらず、貴方をお迎えする準備ができていない」
「私は客人としていくんじゃありません。最低限、眠るところと食事の用意さえしてもらえれば十分です」
「しかし」

 まだ躊躇するオレールに、ブランシュは微笑みを返した。

「せっかく婚約したのですもの。あなたと一緒にいて、あなたのことを知りたいのです」

 オレールの耳のあたりが赤くなったのが、ブランシュの視界の端に移った。表情は硬いままなので、余計にかわいらしく見える。

(うん。こんな風に、もっと彼のことを知りたいわ)

 彼がどう考えていようと、対外的には婚約者なのだ。ブランシュはこの結婚をできればうまくいかせたいと思っている。

「……わかりました。では、三日後、神殿までお迎えに上がります」

 オレールはそう言い、レジスと共にタウンハウスへと戻っていった。