「わかりました。すみません。突然誘って」

「ううん、気にしないで。何か用事でもあった?」



スクールバッグに伸ばした手がピタリと止まった。


は……? 嘘だろ? ドッキリか何かか?


確認するように彼女の顔を見るも、首を傾げている。


……そりゃそうだよな。よく考えたら、泣くほど辛い状況で、なおかつ受験も間近。

企む余裕……あるはず、ないよな。



「……そんなの、自分の胸に手当てて考えてください」



少々乱暴な手つきでチャックを開け、取り出した紙袋を押しつけてその場から走り去った。


忙しい日々を過ごしているのは知っていた。

それに最初から難しそうって言ってたし、そもそも会う約束だってしていなかった。

会えただけでもありがたいって思わなきゃいけないのに。



『ふふふっ、任せといて!』



あんなに可愛く笑って、さんざん期待させといて。

楽しみにしてたのは俺だけだったのかよ。



「忘れんなよ、バカ……っ」



虚しさから涙が込み上げてきて、帰宅した後、毛布にくるまって30分ほど泣いた。