ブライト王国では、王家の子供が一三歳になると、ラングレン山に住む聖獣から加護を与えられる。
ブライト王国を守り続けることが、初代ブライト王国国王と友人関係にあった狼の聖獣の願いだったからだ。

 とある秋の日の昼下がり、聖獣たちがなにげなく集まっていると、銀色の狼が空を駆けて来た。

『あ、ダグラス様』

 狐の聖獣が呼んだのは、ドルフの父親の名前だ。

『みんな、元気か?』
『父上? 帰って来たのか?』

 狼の聖獣・ダグラスは、ラングレン山で最も力の強い聖獣だ。現国王に加護を与えていて、王城にいることが多く、山に戻ることはほとんどなかった。

『イーサン王が死んだ。私の役目は終わりだ』

 ダグラスは、地面に降り立つなりそう言った。

『じゃあ次の王はルパートか。加護を与えたのはフランクリンだっけ?』
『ああ。じゃあ様子を見に行ってくるかな』

 木の枝にとまっていた鷹の聖獣が、そう言って飛び立つ。
 鳥の聖獣は耳がよく、呼ばれればすぐに飛んでいけるからか、加護を与えた相手にぴったりくっついていることはない。

『父上、寂しいのか? 時を戻すか?』

 落ち込んでいる様子の父に、ドルフはそう提案した。しかし、銀色の狼は目をつぶり、静かに首を振る。

『いいや。イーサンは納得して人生を終えた。後のことは次の世代に任せるべきだろう。ところでドルフ、お前はいつまで、そうして遊んでいるつもりなんだ? 本来、われら狼の一族が、この国を守っていかなければならないのに』