「ごまかしても駄目よ……」
「こっち」

 オリバーはフィオナの手を掴むと、ぐいぐいと引っ張っていく。

 城と後宮の間にある木陰で、オスニエルが横になっていた。少し離れた場所に、ロジャーがいて、フィオナに気づくと人差し指を立てた。

「食後に休憩していたら、珍しく寝てしまったようで」
「まあ」
「近づくと起きてしまうので、離れて様子をうかがっていたのです」
「私が代わるわ。何時までに起こせばいいの?」
「恐れ入ります。そうですね。後三十分くらいは大丈夫です」
「じゃあ、その間あなたも休んでいて。どうせ、オスニエル様に付き合って夜も遅いのでしょう?」
「さすがフィオナ様。お見通しですね」

 これはいい機会だ。アイラは静かに、オリバーはじっとしている訓練になる。
 フィオナはふたりに向き直り、小声でささやいた。

「今度はお父様を起こさないゲームをしましょう。近づきすぎたり、うるさかったりすると起きてしまうわ。さあ、静かにできるかしら」

 アイラとオリバーは黙ったまま、コクコクと頷く。

 一〇分もするとうずうずするのか、アイラは必死に口もとを押さえ、オリバーも足踏みをしてはバツが悪そうに頭をかく。

 途中から目を覚ましていたオスニエルが、いったいどこで起き上がれば子供たちを泣かさずに済むかと悩んでいたことも知らずに、フィオナは穏やかな気分で、子供たちを見詰めていた。


【Fin】