翌日、私はアルト様を空き教室に呼び出した。

「リーネ、どうしたの?不戦敗でも申し込みに来た?」


「そんなことしませんわ。私、これでも負けず嫌いですもの。しかし、この賭けにはある問題がありますわ」

「どれだけ私がフローラ・ヴィアローズ男爵令嬢を諦めさせても、アルト様がフローラ・ヴィアローズ男爵令嬢に気があるフリをすれば永遠に彼女は貴方を諦めない」

「つまりアルト様が賭けに勝つために彼女を利用する限り、私に勝ち目はない」



「へー、さすが。やっぱり、リーネは頭がいいね・・・そう、リーネのいう通り、リーネに隠れて俺が彼女に気のあるふりをすれば、君に勝ち目はない」

「俺は、賭けに狡《ずる》さは必要だと思っているからね」

「でも、君は一度受けた勝負を降りることなどしないだろう?」



「ええ、だから本当に私を愛しているのなら証明して下さい」



私は、公爵令嬢らしく微笑んだ。

アルト様の表情は変わらない。