「ねぇ、知ってる? 最近《Noche》っていう暴走族が出来たんだって」
調理部の活動中、そんな声が聞こえてつい耳をかたむけてしまう。
暴走族なんて、聞いたことはあっても身近に存在するものじゃないから。
「え⁉ なにそれ、暴走族って道路逆走したりとかするアレ?」
「いやそれがさ、そういういわゆる暴走行為はしないんだって」
「じゃあ何してるの?」
フルーツをカットしている私・柳沢緋芽は、不思議そうに聞く話し相手の子と一緒に首を傾げた。
暴走行為しないのに暴走族って言うの? 変なの。
「えっとね、《Noche》は夜の街を守っているんだって」
「なにそれ? 自警団的な? 暴走族名乗る意味あるの?」
確かに、とうんうんうなずく私。
すると前の方から慌てた声がした。
「緋芽さん! ナイフ!」
「え? いたっ!」
「あー遅かったか……」
あちゃー、と眉をハの字にする先輩を前に、私は切ってしまった左人差し指を掴んだ。
「いったーい!……またやっちゃった」
気になることがあると注意散漫になっちゃう私の悪いクセ。
包丁持ってるときは特に気をつけなさいってみんなから言われてたのに……。
「そんなに深くないみたいだけど、血が止まらないわね。絆創膏持ってきてあげるから、洗い流しておいて」
「はい、ありがとうございます」
シュンとしながら手を洗っていた私は、さっき聞いた《Noche》とかいう暴走族のことなんて頭から消えていた。
まさか、今後関わり合いになるなんて思ってもいなかったんだもん。
調理部の活動中、そんな声が聞こえてつい耳をかたむけてしまう。
暴走族なんて、聞いたことはあっても身近に存在するものじゃないから。
「え⁉ なにそれ、暴走族って道路逆走したりとかするアレ?」
「いやそれがさ、そういういわゆる暴走行為はしないんだって」
「じゃあ何してるの?」
フルーツをカットしている私・柳沢緋芽は、不思議そうに聞く話し相手の子と一緒に首を傾げた。
暴走行為しないのに暴走族って言うの? 変なの。
「えっとね、《Noche》は夜の街を守っているんだって」
「なにそれ? 自警団的な? 暴走族名乗る意味あるの?」
確かに、とうんうんうなずく私。
すると前の方から慌てた声がした。
「緋芽さん! ナイフ!」
「え? いたっ!」
「あー遅かったか……」
あちゃー、と眉をハの字にする先輩を前に、私は切ってしまった左人差し指を掴んだ。
「いったーい!……またやっちゃった」
気になることがあると注意散漫になっちゃう私の悪いクセ。
包丁持ってるときは特に気をつけなさいってみんなから言われてたのに……。
「そんなに深くないみたいだけど、血が止まらないわね。絆創膏持ってきてあげるから、洗い流しておいて」
「はい、ありがとうございます」
シュンとしながら手を洗っていた私は、さっき聞いた《Noche》とかいう暴走族のことなんて頭から消えていた。
まさか、今後関わり合いになるなんて思ってもいなかったんだもん。