借金は返済できる金額だし、もう伊吹と一緒にいる必要はないんだろうか。
そう思っていたときだった。

不意に伊吹の両腕が伸びてきて夏波の体を抱きしめた。
ドキリと心臓が高鳴る。
緊張感はあるけれど、イヤなドキドキ感はない。


「本当はすっげー助かる。また、アロマを準備してくれるか?」


耳元で言われて夏波の体温は急上昇する。


「も、もちろん!」


とは言っても今は仕事道具を持っていない。
新にちゃんと説明する必要もあるし、現実を考えれば気持ちは滅入ってくる。

でも……。


「夏波の彼氏には俺も一緒に謝りに行こう。もう夏波のアロマなしじゃ眠れないんだ」


伊吹がそう言ってくれるから、夏波は笑顔で頷いたのだった。