「……作ってる」

「……うーん、私っていっつも適当だからさぁ」



ヘラっと笑う。

慣れてる慣れてる。



「バレにくいんだよねぇ。まさか、鹿野くんにばれるとか思ってなかったわー」

「森永、」

「いや、いーの。気にしてないしさ」



鹿野くんの目が見れない。

あぁ。毎回、いっつもこうして逃げてる。

なんで私、こんなんなんだろう。



「森永」

「ん?」

「——知ってた」



その一言、発された言葉に。

目を見開いた。



「……は、」



は、と瞳が揺らぐ。

知ってたって、何を。

私が美術に出ない理由を?

私が左手を使ってる理由を?

それとも——……



「一年のころ、遅刻した時あって、」



その時、アンタのクラス、美術で。



「サボって裏庭でボーっとしてる、アンタを見てた」