「——森永!」

「……鹿野、くん」



名前を呼ばれて、その声が、あいつのもので、顔を上げる。

そこに映ったのは、鹿野くんだ。



「美術、もう、始まってるよ……?」

「知ってる」

「あ、私を探しに来たの?これはね、ちょっと気分じゃないから」

「違う」

「だから、美術の授業、行ったらいいんじゃないかな。鹿野くん、授業さぼるタイプじゃないし」

「行かない」

「ノリ?うん、これもノリだけど、鹿野くんもノってたりする?」

「違う」



やだ、全否定。

相変わらずバッサリ行くね、鹿野くんよ。



「森永、気軽に、アンタのこと決めつけて悪かった」

「ううん、何言ってんの、鹿野くん」

「森永のこと、なんも考えずに軽いこと言った」

「ううん、気にしてないよ、鹿野くん」

「ごめん」

「気にしてないよ?何言ってんの、鹿野くん。いつになく素直だけど」



にこにこ笑う。

いつも通りのこと、気にしてない。

美術サボってんの、きっとみんな適当にあしらってるだろうし。