痛いぐらいに後ろから抱きしめられたシルディアは、背中に伝う冷や汗を抑えられずにいた。
なぜなら――
「君の名前を教えてほしい」
「ですから、わたくしはフロージェだと申しております」
「噓つき。君はフロージェではないだろう?」
「っ、お戯れを」
シルディアを抱きしめるのは、皇王オデルだ。
妖精姫フロージェの影武者として皇都の城に着いたシルディアは、皇王に挨拶するため謁見の間へ訪れた。
定型的な挨拶を交わし、謁見の間から出る瞬間に後ろから抱きしめられたのだ。
後ろから回されたのは片腕だけだというのに、身動きが取れなくなってしまった。
もう片方の手は、シルディアの命を握っていると言わんばかりに、顎を掴み上を向かせている。
「君の名前は?」
「フロージェですわ」
「ふぅん。あくまでも妖精姫だと呼称するのか」
視界の端でギラギラと輝く赤い瞳に熱が籠った。
その熱に嫌な予感が脳裏を掠めたシルディアが抗議の声を上げる。
「な、なにをっ――」
無防備に晒された首元にオデルが口を寄せ、かぶりついた。
鋭い痛みにシルディアが顔を歪める。
「あぁ、やっぱり、君の白い肌には真っ赤な血がよく似合う」
恍惚な声を聞きながら、シルディアはどうしてこうなったのか現実逃避をするため、意識を手放した。
なぜなら――
「君の名前を教えてほしい」
「ですから、わたくしはフロージェだと申しております」
「噓つき。君はフロージェではないだろう?」
「っ、お戯れを」
シルディアを抱きしめるのは、皇王オデルだ。
妖精姫フロージェの影武者として皇都の城に着いたシルディアは、皇王に挨拶するため謁見の間へ訪れた。
定型的な挨拶を交わし、謁見の間から出る瞬間に後ろから抱きしめられたのだ。
後ろから回されたのは片腕だけだというのに、身動きが取れなくなってしまった。
もう片方の手は、シルディアの命を握っていると言わんばかりに、顎を掴み上を向かせている。
「君の名前は?」
「フロージェですわ」
「ふぅん。あくまでも妖精姫だと呼称するのか」
視界の端でギラギラと輝く赤い瞳に熱が籠った。
その熱に嫌な予感が脳裏を掠めたシルディアが抗議の声を上げる。
「な、なにをっ――」
無防備に晒された首元にオデルが口を寄せ、かぶりついた。
鋭い痛みにシルディアが顔を歪める。
「あぁ、やっぱり、君の白い肌には真っ赤な血がよく似合う」
恍惚な声を聞きながら、シルディアはどうしてこうなったのか現実逃避をするため、意識を手放した。