貴族邸の応接間と見紛う部屋にシルディアの間の抜けた声だけが空気を揺らした。
対面のソファーに座るアリスも、隣に密着しているオデルも気に留めた様子はない。
しかし思わず声が漏れてしまったシルディアは、恥ずかしさから少し早口で続く言葉を口にする。
「どういうこと? わたし、神力を使った覚えなんてないわよ」
「俺を正気に戻したアレが神力だ。無意識だっただろうが、ちゃんと使えていた」
「え? でもあの時は、無我夢中で……」
オデルを正気に戻した時というのは、彼が初代竜の王に飲み込まれそうになった時のことだ。
その時のシルディアは、自身の内側から湧き上がる衝動のような力を解放したに過ぎなかった。
シルディアとオデルの会話を聞いていたアリスがにやりと笑う。
「なんだい。一度使っているのなら話は早いじゃないか」
「使った時の感覚をあまり覚えていないわ」
「いいから手を出しな」
「わ、分かったわ」
シルディアの手に、アリスの皺の目立つ手が重なった。
途端、温かな何かが体中を巡る。
思わずアリスを見つめれば、彼女の瞳の中でシルディアが薄い空色の目を見開いていた。
対面のソファーに座るアリスも、隣に密着しているオデルも気に留めた様子はない。
しかし思わず声が漏れてしまったシルディアは、恥ずかしさから少し早口で続く言葉を口にする。
「どういうこと? わたし、神力を使った覚えなんてないわよ」
「俺を正気に戻したアレが神力だ。無意識だっただろうが、ちゃんと使えていた」
「え? でもあの時は、無我夢中で……」
オデルを正気に戻した時というのは、彼が初代竜の王に飲み込まれそうになった時のことだ。
その時のシルディアは、自身の内側から湧き上がる衝動のような力を解放したに過ぎなかった。
シルディアとオデルの会話を聞いていたアリスがにやりと笑う。
「なんだい。一度使っているのなら話は早いじゃないか」
「使った時の感覚をあまり覚えていないわ」
「いいから手を出しな」
「わ、分かったわ」
シルディアの手に、アリスの皺の目立つ手が重なった。
途端、温かな何かが体中を巡る。
思わずアリスを見つめれば、彼女の瞳の中でシルディアが薄い空色の目を見開いていた。