その後に、手首を掴まれて後ろ手に拘束される。




熊川(くまがわ)先生、腕から血が!」


「大丈夫です、それよりもカッターを取り上げてください!」




体を捻って抵抗の意思だけ示しておくと、デスクの上に上半身を押さえつけられて、間もなく手の中のカッターも没収された。

呪いが解けたように、私は脱力してひっそりと息を吐く。

後は、説教を聞くだけでいい。



凶暴な生徒を取り押さえて騒動が沈静化したら、保護者を呼び出して説教するのが学校というもの。

生憎と私の親は学校からの電話に出なかったらしく、単独で事情聴取と説教を受けることになった。


言葉の圧はあっても、手を出してこない教師との時間は、私にとって束の間の休息と同じ。

いつも通り「はい」と「すみません」を駆使して説教を聞き流すと、私は生徒指導の先生と共に帰宅することになった。