Side:西蓮寺(さいれんじ)氷柳(ひりゅう)


人の苦労話を聞いて、俺は生活に不自由したことがないのだと知った。

どうやら俺の両親は、金持ちと呼ばれる人種らしい。


学園には、俺と同じように、生活に不自由しない人間が沢山いる。

交わされる会話は、政治、経済、あるいは旅行などの自慢話。

親の交友関係を引き継いで、子供同士“友達”になることもざらにあった。



いつからだろう、俺が不良と呼ばれるようになったのは。

最初に授業をサボったのは、どんな理由からだったか。


そんなことも忘れてしまうほど、俺は今の気ままな生活に馴染んでいる。




「にゃぁぁ……」




か細い鳴き声が聞こえて、足を止めた。

辺りを見回すと、連れは「どうしたん?」と声をかけてくる。