「俺の彼女になれよ」

「いつも言ってるけどまずは『おはよう』ね。そして答えはNOです」

 もはや日課となっている平日の朝のやり取り。
 朝の挨拶もなく俺様なことを言ってのけるのは去年お隣に越して来た一つ下の男の子・ダイキ。
 初めは普通だったはずなのに、いつからか朝の挨拶がこれになった。

 ……いや、挨拶か? これ?

「別にいいじゃん? 今カレシいねぇんだろ? コトハ」

「でも最初言われたときはいたからね? いるって言ってるのにいつもそんなことを言う男とはつき合えませーん」

 これもいつものやり取り。
 慣れてしまってもう冗談にしかなっていない。
 むしろ初めもどれくらい本気だったか分からないし。

「だいたい私年下は対象外なの。これも何度も言ってるよね?」

「でも好み変わるかもしれねぇじゃん?」

「絶対ない」

 年下の男の子はみんな弟みたいにしか思えないんだよね。
 恋愛対象になるなんて考えられないよ。
 だから、これからも毎日言われたとしても有り得ない。


 その、はずだったんだけどな……。