シャルドンエトワール本社・商談ルーム

茉白が待っていると、ドアが開く。
米良が開けたドアから、先に遙斗が入室する。
少し遅れて米良が入室する。

「こんにちは。」

「こんにちは、茉白さん。」

この日二人の顔を見て、茉白は緊張と同時に不思議と安心した気持ちになった。

「こんにちは。よろしくお願いします。」

ここのところ週2日、影沼と仕事をすることで茉白は気疲れしていたようだ。


「今日は、以前にお話ししたレイングッズのサンプルをお持ちしました。傘は大きいので代表的な柄を一つだけです。他の柄は必要があれば後日郵送の手配をします。」

茉白は持参したスーツケースを開けると、商談テーブルに傘やレインポンチョ、雨の日向けのバッグなどを広げた。

「前にもご説明した通り、雨の日は気持ちが沈んでしまう人も多いので大人も使いやすいスモーキーな色味で花柄を作りました。色はこちらの資料の通り、人気カラーをアンケートで調べて—」
茉白はいつものように説明する。

「うちもシーズンになったらレイングッズは売り場を拡大するから、カラーを選定して仕入れようと思う。過去の実績も悪く無いし、見た感じどれも悪くないから全カラー展開しても良さそうだけど—」

遙斗はサンプル全体を見渡した。

「前回の企画説明の時にも気になっていたけど、これだけのラインナップでなんで折り畳み傘が無い?作れないわけじゃないだろ?」

「あ…」

「うちではどちらかというと折り畳み傘の方が売れ筋だし、占有面積が少ない分展開がしやすいから、できれば同じシリーズで折り畳み傘を発売して欲しい。またOEMのような形を取ってもいいけど…」

本来なら願ってもいないシャルドンからの提案だ。