わたしがもっと明るい性格で、自分の家には優しい母親と厳しいけれど頼りになる父親がいてくれて、もっと素直になれていたら……。

 ───わたしは虐めっ子たちとも、真正面から戦えた気がするのに。


「だから、沢山の人たちの悩みを聞いてくれていた蛍さんと、わたしも話したいんです」


 わたしの意志を汲み取ってくれたのか、蛍さんはこれ以上ないほどの優しい顔をして笑った。

 まるでその微笑みは、真っ暗で薄汚いわたしの曇った灰色の世界に、一輪の鮮やかな花を咲かせたような、そんな錯覚に陥る。


「分かった。みんなが見れるツイートをしよう」

「……っはい!」


  蛍さんが知りたがっていた、わたしが“死んでしまった理由”

 あの時は全てに絶望したから、なんて曖昧過ぎる答え方をして蛍さんに怒られてしまったけれど、今回は違う。わたしが思っていること、全部言うんだ。

 目の前にいるたった一人を信じて、わたしは開けもしなかったこの世界への扉と、自分自身の心の扉にゆっくりと鍵を差し込んだ。


【わたしの世界には、誰一人味方がいませんでした。学校では毎日のように虐められて、今はまだマシになったけど前はもっと酷いことを沢山されていました】


 ピコンッと呟きが完了した通知音を聞いて、文字を打っていたわたしのことを見つめていた蛍さんの目線が、スマホの画面上へと戻る。