「はぁっ、はぁっ、はぁっ───!!」
本当にあのお婆さんには、感謝しなければならない。だってあのお婆さんの言葉がなければ、わたしはもう一生蛍さんとは会わないつもりだったから。
蛍さんのあの冷たい言葉を鵜呑みにして、勝手に傷付いて、自分の思い描いていた蛍さんじゃなかったからといって逃げ出したなんて、今思えば本当に馬鹿みたい。
わたしは目に涙が浮かぶのを感じながら、ただひたすらに走り続けていた。蛍さんが今、どこにいるのかは分からない。自分がどこへ向かっているのかも、正直よく分からない。
……それでも、呼んでるんだ。
瞳を閉じて心をすっきりと落ち着かせたら、なぜか分からないけれどわたしは蛍さんの心の声が聞こえる気がする。
これは馬鹿げたわたしの妄想かもしれないけれど、蛍さんがわたしの心に、ここにいる、と呼びかけてくれている気がしてならないんだ。
冷たい言葉をかけてしまった。酷いことを言って、あの人から逃げてしまった。こんなわたしは、もう蛍さんには助けてもらえないのかもしれない。
もう一生、あの力強い腕に抱きしめてはもらえないかもしれない。