───…ミーンミンミンミンミンミン。

 七月という立派な立夏の季節にわたしは一体なぜこんな所で蝉たちの大合唱を聞かされているのだろうか。

 夏が嫌いなわたしは、この状況に酷く呆れていた。はぁー、という暗い暗い溜め息を吐き、わたしは真っ青な空を掴もうと上へ上へと手を伸ばす。

 一体いつまでそうしていたのか。全ての感情を失ったように草藁に寝転がって、海のように深く透き通った深い空の水色を、ただぼーっと見ていたわたしは突然意識を取り戻したようにして、勢いよく起き上がった。

 あの日からわたしは気の向くままに放浪生活を送っている。どこに行くわけでも何をするわけでもなく、ただ世界の隅っこを眺めている。そんな感じだ。

 死にたいと願いながらもただ必死に生きていた頃は時間の流れというものを感じながら息をしていたというのに、今のわたしには時間に囚われなくなった瞬間に、本当に何をして良いのか分からなくなる。

 そしてこの放浪生活をしているうちに分かったことがある。わたしのこの姿は、他人の目には視えていない───。