【短編】かわいく、ワルく、甘く愛して。

 確かに断った。

 でも、知っていたのに今まで黙っていたなんて……。

 私が頑張って違反者探しをしていたのを知っているはずなのに、少し酷いと思う。

 恨めしい眼差しを送っていると、「それに」ととびきりワルい笑顔を浮かべる累さん。


「那智が俺のこと好きになるまでの時間が必要だったしな?」

「なっ⁉」


 もはや絶句。

 まさか時間稼ぎのために黙っていたなんて……。

 しかもまんまと思惑通りになってしまっている現状が恨めしい。


「おっと……裕、どこに行くつもりなんだ?」

「ひっ!」


 私と累さんが話している間にソロソロとドアに向かっていたらしい裕くん。

 低い声で呼び止めた累さんは、彼の首根っこを掴んで冷徹に告げた。


「前に一度忠告はしたし、勝手に捕まってろって思ってたけどな……俺の“唯一”に手を出そうとしたんだ。相応の覚悟はしてもらうぜ?」

「え、いや……那智さんが累さんの“唯一”だってのは知らなかったし……」

「んなの関係ねぇよ。どっちにしろ俺が気に入ってる女に手を出そうとしたんだ……ハンター協会につき出すだけで済むと思うなよ?」

「ひいぃぃぃ!」


 相当怖かったのか、情けない悲鳴を上げる裕くん。

 そんな彼を締め上げ意識を失わせた累さんは、ふぅ……と息を吐いた。