【短編】かわいく、ワルく、甘く愛して。

「さぁて、俺の“唯一”に何をしようとしてたんだ、裕?」


 ゆっくり近づいて来る累さんを怖がるように裕くんは後退る。


「ゆ、“唯一”? そうか、おかしいとは思ったんだ。女を寄せ付けなかったあんたが那智さんにはべったりだったから……」

「え? 女を寄せ付けない? だってさっきは女の子をとっかえひっかえしてたって……」


 さっきと言ってることが違う、と思って疑問を口にすると、裕くんじゃなくて累さんが「は?」と不機嫌そうな声を上げた。


「女の子をとっかえひっかえ? それはお前のことだろうが、裕。気に入った女をここに連れ込んでは吸血して、記憶消して次の女をまた連れ込んで」

「え? ここに連れ込んでは吸血してって、累さんは裕くんが違反者だって知ってたんですか?」


 累さんの言葉にまた別の疑問が浮かんでそのまま問いかける。

 累さんは他にもヴァンパイアはいると言った。

 それは裕くんのことなんだろうけれど、彼が違反吸血していると確証を得ているような言い方はしていなかった気がする。

 自分以外にヴァンパイアはいるから、そいつなんじゃないか?って程度の認識だと思っていた。

 でも今の言葉は、裕くんが違反吸血していたことも知っているかのようだ。


「ああ、知ってたよ?」


 悪びれることなく素でうなずく累さんが少し腹立たしい。


「じゃあどうして教えてくれなかったんですか⁉」

「だって、那智は俺の協力の申し出を断っただろ?」

「そ、れは……」