「そんなことないですよ! お願いします!」

「そう? じゃあ後で付きっ切りで教えてあげるよ」


 すぐにパッと明るい笑顔を見せる累さんは本当にあざと可愛い。

 あざとい、あざとすぎる! でもやっぱり可愛い!

 後で二人きりになる約束を取り付けられたっていうのに、私は強く断ることが出来なかった。


 ……そして、二人きりになったら。


「なーち。早く俺のになるって言ってくんない?」

「い、言いません!」


 一応ちゃんと仕事を教えてくれつつも、向かい側から私の髪の毛先にじゃれつく累さん。

 色っぽく指を絡めるとかじゃなくて、まるで猫が猫じゃらしにじゃれつくようにチョイチョイと触れてくるだけ。

 でもそれがまた可愛くて、私のツボを的確について来ている感じがした。


「那智が俺の“唯一”ってのは変わりないんだからさ、俺が那智に惹かれるのは自然の摂理なの。“唯一”と一緒になれなかったヴァンパイアは狂っちゃうって聞くしさー、俺を助けると思って……な?」


 またしても上目遣いでちょこんと小首を傾げる。

 可愛い……って! ダメダメ! 耐えるのよ私!