「不安がるようなことは何もないんだ。私はずっとあなたが十八歳の誕生日を迎えて成人するのを待っていた。それと、昨日は会えなかったから言えなかったけど、誕生日おめでとう」
「あっ……」
 そこでオーレリアは昨日が自分の誕生日だったということを思い出した。今まで誕生日を祝ってもらったことなんてなかったのですっかりその存在を忘れていた。

 トラヴィスの運命の赤い糸を確認した昨日はオーレリアの十八歳を迎えた誕生日。
 オーレリアが十八歳になったからトラヴィスの小指に赤い糸が出現したのだとしたら……。

 偶然かもしれないのに、ただの自惚れかもしれないのに、その相手が自分なのではという微かな希望をオーレリアは抱いてしまう。
 トラヴィスは腕の力を緩めるとオーレリアから離れる。

「もう一度、私の小指の赤い糸が誰に繋がっているのかきちんと確認して欲しい」
 懇願されたオーレリアは、恐る恐る左手の親指と人差し指でわっかを作って覗き込み、トラヴィスの左手の小指についた赤い糸に意識を集中させる。
 心臓の音がドクン、ドクンとやけに煩く聞こえるのを感じながら頭の中に浮かび上がる名前を今か今かと待ちわびる。