話を聞き終えたオーレリアは昔、高熱を出したコーレリアの代わりに何かの儀式に出席させられたことを思い出した。

(一度だけ綺麗なお姉さんたちの運命の相手を確認して名前を教えたことがあったけど……あれはハルディオ帝国の皇女たちだったのね)
 オーレリアが納得しているとトラヴィスは苦笑して肩を竦める。

「……文の言い回しがまずかったのか、ルパ王は王女を帝国へ嫁がせろと勘違いしてしまったようだね」
 オーレリアはルパ王の酷い勘違いが恥ずかしくなって、居たたまれない気持ちになった。すぐにルパ王族の一人として頭を下げて謝罪する。


 するとトラヴィスは首を横に振った。
「行き違いはあったようだけど、結果としてあなたは帝国へ来て弟たちの運命の相手を見つけ出してくれた。心から感謝しているよ」

 トラヴィスが萎縮してしまっているオーレリアに助け船を出していると、皇帝が唸った。

「それにしてもなんとも無礼な話だ。余が息子たちよりも年下の娘を娶るわけがないだろう。そして一夫多妻制の制度が設けられてはいるがハルディオ皇帝の妻は代々一人だけだぞ!」
「陛下、お怒りを静めてください」

 控えていたフレディが身体に障っては大変だというように諫める。
「余は別に怒ってはおらぬ。ただ呆れているだけだ」
 皇帝は溜め息を吐くと背もたれ代わりのクッションに身体を埋めた。