「嗚呼、やはりオーレリア王女の神の恵みは素晴らしいね」

 クラウスの結婚が決まり感無量の表情を浮かべるトラヴィスはオーレリアの神の恵みを絶賛する。

「まさかクラウスにあんな趣味があったなんて全然知らなかったよ」
「人は見かけによらないものですね」

 周りに抱かれている印象のせいで裁縫が趣味だと言い出せなかったのか、朴訥な性格上主張しなかったのかはクラウス本人に訊いてみなければ分からない。
 しかし家族にも黙っていたことを考えると答えは前者な気がする。

「クラウス様は周りの反応が怖かったのかもしれません。私もクラウス様と同じ状況なら周りが持つ印象と乖離しないよう本当の自分を隠すと思います」
「私はどんなオーレリア王女でも受け入れられる自信がある。だから私にはありのままのあなたを教えて欲しいな。どんな花が好きかや、何をしている時に幸せを感じるのかいろいろ知りたい」

 オーレリアは戸惑いつつも天井の方へ視線をやりながら答える。

「そうですね。花はブーゲンビリアが好きです。……何をしている時に幸せを感じるかは……ごめんなさい。分かりません」
 今までそんなことを考えたこともなかったので答えが見つからない。

「因みに私の最近の幸せを感じる時間はオーレリア王女と二人きりで話している時かな」
 トラヴィスは爽やかな笑みを浮かべて言った。

「へっ!?」
 たちまちオーレリアの胸は高鳴った。

 恋していなくてもきらきらしい容姿のトラヴィスにそんなことを言われたら、誰だって胸がドキドキしてしまう。