「……落差がありすぎるので誰にも話していませんが裁縫が好きなんです。誰かと話さなくていいし、無心で刺していられる。その時間が僕にとっては至福です」
 その話を聞いてアニーはうんうんと何度も頷く。彼女も人と会話するのが苦手なようで、ぬいぐるみを編んでいる時が一番幸せを感じるのだという。


「もしよろしければ私の猫さんと殿下の犬さんを交換してくださいませんか? 刺繍の犬さんが飼っているうちの犬にそっくりなんです」
「もちろん。丁度あなたが作った猫さんを欲しいなと思っていたところです」

 先程まで気まずかった空気が一転して、二人は会話を弾ませていく。

 雰囲気が良くなっていくにつれて二人を結ぶ赤い糸の色が濃くなると、同時に弛緩していた糸が弦のようにピンと張られていく。最終的に赤い糸は黄金の光を放ち始めた。

 オーレリアは赤い糸の変化を目の当たりにして二人が確実に結ばれる運命にあると悟った。
 その後も二人はお茶会がお開きになるまでずっとお互いについていろいろな質問をして親交を深めていった。


 お茶会が開かれてから半年後、クラウスとアニーの結婚が決まった。
 短い交際期間を経ての結婚だったが、二人の仲睦まじい様子は誰の目から見てもお似合いで幸せそうだった。