暗い表情でいるとトラヴィスが持っていたカップをソーサーの上にカチリと置いた。

「あなたの神の恵みは大いに役立つと私は考えている。オーレリア王女は運命の赤い糸で結ばれた相手が見えるんだよね?」
「はい。そうです、けど……」
「なんて素晴らしい力なんだ!」

 歓喜の声を上げるトラヴィスにオーレリアは目を瞬くと小首を傾げる。

 素晴らしい力? 運命の相手が見えて教えるだけの力が?

 腑に落ちなくて視線を向けると、トラヴィスは頷いて事情を説明してくれた。


 皇帝代理となった折りにトラヴィスは皇帝から弟たちの結婚相手を見つけて欲しいと頼まれた。
 というのも二人の弟たちは姉弟の中でも非常に癖が強いらしく、きちんと結婚して生涯添い遂げられる伴侶を得られるかどうかが皇帝にとって大きな悩みの種になっている。


「あなたには是非とも弟たちの運命の相手を見つけて欲しいんだ。弟たちは皇子という身分なのにちっとも相手が見つからなくて。……あと二人と話しても女の子に興味がないのか恋バナの『こ』の字も出てこないんだ!!」
「は、はあ……」

 皇帝と自分との結婚の前にまさか義理の息子たちの結婚をどうにかして欲しいと頼まれるとは予想外だ。