大陸南西部に浮かぶ小さな島――ルパ王国の王女・オーレリアが敵国のハルディオ帝国へ嫁ぐことが決まったのは十五歳の時だった。

 ことの発端となったのはオーレリアの父であるルパ王に原因がある。
 野心家な彼はハルディオ帝国が海洋進出をして王国周辺の漁業資源や安全を脅かし実権を握ろうとしていると主張し、無謀にも大陸の半分以上を統治する帝国に戦を仕掛けた。

 小さな島を統治するだけのルパ王国は当然のことながら半月も経たずして敗戦した。

 これまでルパ王国がハルディオ帝国から侵攻を受けなかったのは小さな島国で大した資源がなかったからと、ルパ王族が神から恵みを与えられているとされていたからだった。

 神の恵みは王族にのみ備わる不思議な力のことで怪我の治療や雨降らしなど、その力は多岐にわたって存在する。ルパ王族の逆鱗に触れればどんな大国も一夜にして滅びると言われるほどその力は古くから恐れられていた。

 ところが蓋を開けてみれば軍事力の差は歴然としていて、ルパ王国の方が一夜にしてハルディオ帝国に追い詰められてしまった。

 圧倒的な国力の差を見せつけられたルパ王は神の恵みだけではどうにもならないと血相を変えて白旗を揚げたのだった。