「まさか満が緋奈を学園に来るよう仕向けていたなんてな……」

 眉間にしわを寄せ、神妙な顔で潤くんが言う。
 律さんが私を助け出した後、みんなもすぐに香りに誘われて駆けつけてくれたんだって。
 そのときに満くんが自分から画策したことを白状したのだとか。

 自分が先に見つけて学園に来るよう仕向けたんだから、私は自分のものだって主張して。


「まあショックではあるけど、俺はちょっと良かったって思ってるけどね」

 沢くんがニッコリと笑みを浮かべた。
 可愛い笑顔だけれど、その顔からはどこか黒っぽいものを感じる。

「満先輩がいなくなったおかげで、ライバルが減ったし」

 訂正、表情だけじゃなく言葉も黒かった。
 しかもあざとい笑顔で私に近づいて来ると……。

「それに弟くんを見つけたお礼、まだ貰ってないしね。ねぇ、どっちにするか決めた? 緋奈先輩」
「うっ」

 催促されて言葉に詰まる。
 了承してないし、無効に出来ないかな?

 そんな私の思いを代弁するように潤くんが割って入ってきた。

「沢、それは無効だって言っただろ?」
「そうそう。吸血もキスも、ヒナちゃんが選んで契約したやつの特権なんだから」

 咲さんも同調して私に近づく。
 そしてするっと手を取り自然な動作で指先にキスをした。

「ひゃぇっ⁉」

 あまりに自然で止める暇がなかったけれど、指先に感じた柔らかい感触に驚く。