「ああ……疲れてる顔してるぞ?」

 言いながら律さんは私の頬を両手ではさみ包み込む。
 そして顔色を見るためなんだろうけれど、非の打ち所のない完璧な顔が近づいた。

「っ⁉」

 ついさっき律さんとのキスを想像していたせいもあって、それだけで頭が爆発しそうなほど熱くなる。
 そんな私の様子に、心配そうだった目の前の顔が少し意地悪なものになった。

「熱いな……緋奈、お前今なにを考えた?」
「んっなっ……それはっ」

 はわわ、となって言葉が出てこない。
 いや、出たとしてもあなたにキスされるのを想像しましたなんて言えないけれど!

「ふっ……可愛いな」
「っ――!」

 もういっぱいいっぱいで、頭がぐわんぐわんしてきた。
 律さんの色気と誘惑が凄すぎる。

「……チッ」

 気を失いそうなほど朦朧とした私は、隣から小さく聞こえた舌打ちを気に留めることはなかった。