「じゃあ、俺が貰っちゃっていい?」
「それは嫌です!」

 今度の質問には考えるまでもなく即答した。
 咲さんのことが嫌いなわけじゃないけれど、キスをしたい相手かって思うと違う気がする。

 バッサリと拒絶したけれど、咲さんは気を悪くした風もなく「ほらね」と苦笑いした。

「律なら嫌とは言わないで恥ずかしがるだけ。俺にはキッパリ嫌だって即答。……もう決まってるんじゃないかな?」

 最後に小さく「残念だけど」と付け加えた咲さんに私は何も言えなくなる。

 確かに律さん相手だと嫌だとは思わなかったけれど……でも好きなのかはまだ分からないし……。

「おい、どうした? 三人で何話してるんだ?」
「っ⁉」

 自分の気持ちがハッキリしなくて迷っていると、今度は話題の律さんが現れた。
 タイムリー過ぎる登場に心臓がバクバクしてしまう。

「緋奈? お前顔色悪くないか?」
「え? そうですか?」

 軽く眉を寄せて心配そうに近づいてきた律さんに戸惑う。
 熱くなったせいか頭が痛くなってる自覚はあるけれど、顔色が悪くなってるとは思わなかったから。