【短編】極上ヴァンパイアたちは薔薇乙女を溺愛中

 吸血契約は単純に必須栄養素を取るためにする場合もある。
 でも、首から血を吸うという行為のためかある程度好意がある者同士が結ぶのが普通だ。

 特にその好意は恋情に発展しやすいため、吸血契約は別名恋人契約とも言われている。

 そんな契約を潤くんが本当にしたいと思っている様には見えなくて、突き放すような言い方をしてしまった。


「そりゃあ緋奈の血は美味かったけど、でもそれだけじゃねぇよ! いいから俺にしとけって……律さんには負けたくねぇんだ」
「……」

 最後の言葉にもはや呆れた。
 好意云々の前に、律さんへの対抗意識から言い出したことだったらしい。

「結局律さんに反発してるだけじゃない。少なくともそんな人と契約したいとは思わないよ」
「え? あ、いや待て!」

 暗にお断りしますと告げて、私は潤くんとの会話を終わらせた。

「違うんだって! お前のことを欲しいと思ってるのは本当で!」

 何か言い訳をしていたけれど聞き流す。

 第一、私の一番の目的は弟の悟志を探すことなんだ。
 契約をした方がいいことは分かっているけれど、誰にするかすぐには決められない以上悟志を探すのを優先したい。