「じゃあお前の部屋に案内するからついてこい。荷物は後で運んでやるから」
「あ、はい」

 律さんの申し出は正直ありがたかった。
 今またみんなのいる共有スペースに戻って荷物を取ってくるのは気が引けたから。

 私を獲物として見る四人の目をまだしっかりと覚えている。
 せめて、温かい飲み物でも飲んでもう少し気持ちも落ち着かせてから顔を合わせたかった。

「女子寮は三階になってる。本来は純血種の女子が入る部屋だけど、元々女ヴァンパイアは少ないこともあって今は一人もいない。不都合があったら俺に言え。出来る限り快適に過ごせるようにするから」
「はい、ありがとうございます」

 素直にお礼を言いつつ、私はちょっと驚いていた。
 だって、いくら同性の住人がいなくて不都合が多いだろうと言っても律さんがそこまでする必要はあるんだろうか?

 トップとしての責任感から言ってくれるにしても、『出来る限り快適に』とまでする必要はないと思う。普通は。

 さっき私の血を吸わずに一人にしてくれたり、律さんは本当に私を気遣ってくれてるように見える。