「お前はこっちだ」

 みんなに血を与え終わったのか、少しすると律さんは私をどこか別の部屋に連れて行く。
 パタンと部屋のドアが閉められると、やっと目隠しの手をどけてくれた。

 でも、そうして見えた部屋は明らかに男の子の部屋といった感じで……。

 ここ、もしかして律さんの部屋?

 自室に連れ込んで私をどうするつもりだろう。
 また、この間のように血を吸われるんだろうかと軽く震えた。

 でも、みんなに吸われるくらいなら律さん一人に吸われた方がマシだと思って私は覚悟を決める。

 緊張からかさっきから感じていた頭痛が強まった気がするけれど、これが終われば一端落ち着くはずだからと自分に言い聞かせた。


「悪い……痛かったよな」

 律さんは熱っぽく息を吐きながら謝ると、まず手の傷を治してくれる。
 舐められて恥ずかしいけれど……これは治療だと思って込み上げてくる悲鳴を抑えた。

「んっ」

 私の手の傷を舐める律さんは色っぽくて……。
 欲を抑えているのか澄んだままのアメシストの瞳は、吸い込まれそうになるくらいキレイだった。

 そうしてつい見惚れていると、傷を治し終えた律さんに手鏡を渡される。
 疑問に思いながら受け取り、何とはなしに自分の顔を映す。

「っ⁉」

 ……本当にバラ色になってるんだ。

 見慣れた顔。
 でも、目の色だけが違っていた。

「何とか落ち着かせろ。……その目をされると、抑えられない」

 そう言った律さんは私一人を置いて部屋を出て行ってしまう。

「……あれ?」

 バタン、というドアの閉まる音を聞きながら、私は首を傾げた。

 私の血、吸わないの?