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「入り口で待ってろって言われなかったか?」

 迫って来た男子から助けてくれたあと、律さんは私の荷物を持ってくれながら不機嫌そうに聞いてくる。

「言われましたよ? だから校舎の入り口に向かったんですけど……」
「そっちじゃない。学園敷地内に入る正門のことだ」

 ため息と一緒に説明されて、私の勘違いだったと知った。
 でも、入り口としか言われなかったんだから勘違いしても仕方ないと思う。

「まあいい。とにかくお前はいるだけでヴァンパイアを惹きつけるってことがよく分かっただろ」
「……」

 まさにその通り過ぎて何も言えない。
 あの獲物を狙う目。
 ただ歩いていただけなのに、声を掛けて契約をなんて言われてしまうんだ。

 律さんの言うことが事実だと、身をもって知った形になった。

「薔薇乙女が学園に来ることは一応全生徒に知らされている。後は純血種である《Luna》とずっと一緒にいれば一般のヴァンパイアには襲われることはない」
「……『一般のヴァンパイアには』?」

 スルーしそうになる言葉だけれど、私は引っかかりを覚えて聞き返した。
 安全なら、わざわざ『一般のヴァンパイア()()』なんて言わないと思うから。