クストディオとわたしは、馬車に乗っている。
 二頭立ての馬車は、もともとヘルマンの馬車である。

 ヘルマンは、王都からこの馬車でやって来たらしい。

 二頭立てというくらいで、それ以外に王族の馬車であるということを象徴するものはなにもない。例えば紋章が飾られているとか彫り込まれているとか、ムダに豪華な装飾品を有しているとか。

 ヘルマンは、なにかしらの理由で王都から逃げてきたのではないのかと推測している。あるいは追われているとか隠れているとか。もしくはそれらすべてとか。

 昨夜、彼がわたしたちに話したことがすべてではないはず。もっと違う情報があることは確か。さらには、嘘や誇張や不足も多々あるはず。

 やはり、ヘルマンの情報だけでは状況の判断は難しい。