「クスト。あなたこそ、わたしを連れてきたことを後悔しているのね」

 いまだ重ねられている彼の手はあたたかい。わたしの冷たい手は、そのあたたかみに触れてじょじょにあたたかみを増している気がする。

 あたたかみに触れ、あたたかくなってきているのは心も同様である。

 クズとディオは、クズすぎる元婚約者に尽くし続けたわたしのささくれだった精神をずいぶんと癒してくれた。ケンカをしながらだけど。

 そのときにはまったく気がつかなかった。気がつく余裕がまったくなかった。だけど、いまはそれを実感することが出来る。

 そして、彼と親密になるごとに心臓がドキドキばくばくする理由が、なんとなくわかった気がする。