【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

 こんなことってあるのだろうか。

 いかんせん恋愛経験がないから、私には判断できない。

社長からロマンチックなプロポーズを受けて、いい雰囲気になって……流れでキスまでしてしまった。

たしかにあの時は、ほろ酔い気分だった。

でも、酔いに任せて人生初のキスを捧げるほど私は愚かじゃない。

理性を失っていたわけでもないし、勢いで許したわけでもない。

 ──相手が社長だったから。

すべてを受け入れてくれるような優しさに惹かれていた。

契約結婚といえども、互いに愛情のようなものは芽生え始めていると感じていた。

 それなのに……。

 結婚式の前日まで花嫁を放って海外出張に行っちゃうって、どういうこと⁉

災害による現地視察だから仕方ないのは理解している。

けれど──連絡ひとつないって、どういうことよ⁉

 あの日、キスをした次の朝。

ドキドキしながらリビングに行ったら、置き手紙ひとつ残して婚約者はいなくなっていた。

どんな顔して会おうかとか、どんな会話をしようかとか、頭の中で何度もシミュレーションしていたのに!

 これから恋が始まる予感に胸を弾ませていたというのに!

 式場の調整も済み、おじい様の意向で──結婚式はまさかの二週間後に前倒しとなった。

バタバタの毎日を乗り越えてきたというのに、肝心の本人がいないなんて、どういうことよ!