息を切らしながら階段を登る。久しぶりに外に出たので体力がなくなっていた。

 頂上に着くと、記憶通りの明るい原っぱが広がっていた。

 こんなところに逃げ込んで、私は一体なにがしたいんだろう。原っぱに腰をおろしながら、空を見上げた。

 青空が灰色の雲に覆われていく。ゆっくりと、でも確実に侵食していく。

(とりあえず心のおもむくままに逃げてきたけれど、もう逃げる場所もないな。詰んだな)

 今日食べる物も、今夜寝る場所も、生きるために必要なものを考えることが煩わしい。

(ずっと前に、ここで自殺しようとしていた人いたな、そういえば)

 ここはあまり人が訪れない。

だからこそ、小学生だった私はよく遊びに来ていた。

公園などは仲良く遊ぶ子たちを見るのが羨ましくて、一人で遊んでいる自分が惨めに思えてしまうから。

(ここは心霊スポットだって失礼なことを言った人。

この崖から飛び降りて死ねば遺体も見つからずひっそりとこの世からいなくなれるだろうとか怖いこと言っていた人。

あれ、誰だっけ? 顔が思い出せない)