電車に揺られること一時間弱。

都心の街並みはすっかりなくなり、電車の窓から見える風景はとてものどかだ。

久しぶりに降り立った八王子駅。昔よりも開発が進んですっかり綺麗にあか抜けている。

それでもバスに乗ってさらに田舎に行くと、東京とは思えない風景が広がっている。

都心の洗練された高いビル群よりも、緑で覆われた山々の方が落ち着くなと思った。

バスを降りて、目の前の山を見上げると、空気が澄んでいて美味しかった。

ずっと座っていたから身体が凝っている。両手を空に突き上げて伸びをした。

山道の階段をのぼる。外は明るいのに、大きな木々に囲まれていて、少し薄暗く不気味だ。

(こんなかんじだったっけ? 滝山城址って)

 記憶の中の滝山城址は、草原に太陽の光が眩しく降り注いでいて、心地のよい場所だった。

(そういえば、ここは心霊スポットで有名って言ってたな。あれ、誰がそんなこと言っていたんだっけ?)