短くしたり染めるって手もあるけれど、その度にひいおばあちゃんがこの髪が好きだって言ってくれたのを思い出しちゃう。
 しわくちゃの手で撫でてくれたことを思い出して、どうしても染めたくない、切りたくないって思っちゃうんだよね。

 お兄ちゃんにも出来れば染めないで欲しいって止められたし。
 だからそんなお兄ちゃんが買ってきてくれた帽子で髪を全部隠してる。

 千代ちゃんたちにはいつか見せてねって言われたし、いずれはちゃんと話そうとは思ってるけど……。

「って、何しんみりしちゃってるんだろう、私」

 ちょっと気持ちがしょんぼりしちゃってるのに気づいて声を上げる。
 こんなんじゃあひいおばあちゃんに笑われちゃうよ。

 ひいおばあちゃんはいつも「笑う門には福来る」って笑顔を浮かべていたから。


 私は気分を変えるために部屋の窓を開けた。

 夜だから少し冷たい風が部屋に入り込む。
 でもその冷たさのおかげでしょんぼりした気持ちをシャキッとすることが出来た。

「あ、今日は満月だったんだ……」

 開けた瞬間から明るいなと思ったけれど、空を見上げて気づいた。
 夜空にはいつもより大きく見えるまん丸の月が昇っている。