『聞いたよ、金井さん。キミ目立つの苦手なんだろ？　決勝にはいかない方がいいんじゃないか？』

　ちょっと嘲(あざけ)るような言い方。
　でも彼は人を馬鹿にするようなことを平気で口にする人じゃない。
　ただの挑発だって分かる。

　だから、私は鼻で笑ってはねのけた。

「苦手でも、克服したいと思ってるんだよ。それに優勝目指すってみんなと約束したからね」

　決意を再確認するよう言葉にして、私は最後の攻撃の歌を歌う。


　上弦の月　夜空に浮かぶ
　引き裂くために　現れたのか
　負けないよ　つないで見せる　この絆


　攻撃のキーワードは【引き裂く】。
　千代ちゃんと千絵ちゃんが作ってくれた創作歌。
　私だけのために作ってくれた歌だ。

　夜になったフィールド。
　半月が浮かぶ空。
　お兄ちゃんが作ってくれたエフェクトを参考にしたのか、ラブちゃんが高く跳んでその半月を掴んだ。

　三日月は鎌になったけれど、半月はブーメランらしい。
　小さな体を思い切りくねらせ、月の光を放つブーメランを構えた。